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2018年03月20日

寄稿 グルコサミン報道を検証(前)

プロテインケミカル(株)

企画開発 顧問 医学博士 勝呂 栞 氏

 

 昨年夏、「経口グルコサミンは変形性関節症(OA)に効かない」とする研究(※1)がオランダのグループによって報告されたことを起因として、ネットニュースや週刊誌などの各メディアに取り上げられ、グルコサミンには膝関節の痛みに効果がないことが確定したと断言する記事が散見されている。グルコサミン研究開発の初期から携わってきた者として、当該研究に対する見解を述べてみたい。

 まず、オランダのグループによる当該研究の要旨と問題点を述べる。研究は1994~2014年に実施されたRCT研究21報を対象とし、利益相反を防ぐためにグルコサミンを製造している企業から研究資金が提供された研究を除外し、残り6報の論文を用いてメタアナリシス解析を行った。その結果、膝や股関節の痛みについて、プラセボに対するグルコサミンの優位性は示されなかったという結論を導き出している。

 しかし、この6本の論文には有名なGAIT Studyも含まれており、しかもGAITが同研究の対象者の大部分を占めている。このGAIT Studyは、プラセボレスポンスが6割以上と高く、全体にはセレコキシブ群(COX-2阻害剤)だけが効果を示し、中等度以上の症状を有する被験者にはグルコサミン+コンドロイチン群だけが効果が認められた。その後2年間の長期観察の報告でもプラセボの効果が高く、ポジティブコントロールとされているセレコキシブ群さえも有効性が確認できなかったという失敗した研究として知られている。

 さらに、対象としている論文が14年までに限定されていることにも留意する必要がある。実は、ほぼ同じ期間に当たる14年8月29日までの論文31報を用いて、グルコサミンと抗炎症薬のdiacerein(国内未承認)の効果を比較したメタアナリシス研究(※2)がある。その結果を見ると、WOMACスコアにおいてグルコサミンとdiacereinにほぼ同等の効果があり、有害事象に関してはdiacereinよりもグルコサミンの方が少ないことが見出されている。

 つまり、同じ期間であっても、除外基準が異なれば当然得られる結果も違うのである。また、16年に報告されたPROOF Study(※3)では、肥満女性を対象に食餌療法+グルコサミンの経口投与を2年半にわたって観察した結果、膝OAの発症リスクの軽減が認められた。一方、食餌療法と運動だけでは、OA発症率の軽減効果が認められなかった。

 また、グルコサミンとコンドロイチンのコンビネーションではあるが、14年と15年に報告されたLEGSおよびMOVES研究も、これらの成分の膝OAに対する有効性を支持している。このように、14年以降でもグルコサミンの有効性を支持する研究が続々と発表されており、当該論文が決して最終結論でないことは一目瞭然と言える。

 次に、利益相反について述べる。当該論文では、グルコサミンを製造している企業から研究資金が提供されている研究を除外する目的について、利益相反を防ぐためと主張しているが、これは利益相反の理解を誤っていると言わざるを得ない。薬剤の開発はそもそも製薬会社が自らの資金で一連の探索研究を行い、特許出願を経て利益相反を開示しながら前臨床試験、臨床試験のデータを発表し、さらに承認審査を受けるという創薬プロセスを経て開発される。製薬会社が膨大な資金を費やして医薬品の有効性を示した研究を、当該グルコサミン研究のような理由で除外すると、どの医薬品も有効性がないことになってしまうだろう。

 利益相反の存在云々よりも、研究資金を提供されていること自体を利益相反として開示することが重要なのである。その意味で、製薬メーカーが主催する従来のグルコサミン研究はフェアといえるだろう。グルコサミンの臨床およびメタアナリシス研究は過去30年間続けられてきており、これからも継続されるはずであることから、当該論文は数多くある研究結果の一つにすぎず、関節の痛みに対してグルコサミンが効かないことが確定されたという結論は拙速すぎると言わなければなるまい。

※1 Ann Rheum Dis. 2017 Nov;76(11):1862-1869

※2 Eur J Med Res. 2015 Mar 13;20:24

※3 Semin Arthritis Rheum. 2016 Feb;45:S42-48

(つづく)

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