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2016年08月25日

機能性表示食品「関与成分」検討会、終盤戦のポイント(前)

【解説】

<ビタミン・ミネラル、健康被害を帳消しにできる消費者メリットはない>

 消費者庁の「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」は終盤戦を迎える。9月1日の第8回会合で「栄養成分」、第9回会合で「関与成分が明確でない食品」を検討。第10回会合で報告書を取りまとめる。終盤戦に向けた議論のポイントを考える。

 食事摂取基準で基準がある栄養成分については、いくつかの方向性が明確となった。第1に、ビタミン・ミネラルを制度の対象に加えることは、委員間で合意できないと考えられる。

 アカデミア委員や消費者代表委員が強く反対する理由に、安全性を確保できないことがある。米国のダイエタリーサプリメント制度がそうであったように、ビタミン・ミネラルを加えると、過剰摂取による健康被害が多発するのは必至。アカデミア委員や消費者代表委員が、消費者間に健康被害を撒き散らすような施策に賛成できないのは当然だ。業界側は要望しているが、健康被害を帳消しにできるような消費者メリットは見当たらない。

 過剰摂取による健康被害の懸念は、昨年12月に食品安全委員会が公表した「いわゆる健康食品に関するメッセージ」でも強調されている。メッセージでは、通常の食事で欠乏症を起こすビタミン・ミネラルはほとんどないと指摘。むしろ、サプリメントの利用による過剰摂取に注意するように呼びかけている。

 もし、機能性表示食品制度の対象とした場合、さまざまな機能性を訴求することで、国民に必要以上のビタミン・ミネラルを摂取させることになる。その結果、政府間の政策に大きな矛盾が生じてしまう。

 梅垣敬三委員(国立健康・栄養研究所情報センター長)が、「制度に入れるかどうかではなく、機能性表示食品制度に馴染まないと整理した方がよい」と発言したのもうなずける。梅垣委員の言葉は、大多数の委員を代表したものだ。

 では、業界代表委員の関口洋一委員(健康食品産業協議会会長)、宮島和美委員(日本通信販売協会理事)、宗像守委員(日本チェーンドラッグストア協会事務総長)は、そうした声に反論できるのだろうか。つまり、消費者間に健康被害のリスクを撒き散らしたり、政府間の政策の矛盾を引き起こしたりしてまで、ビタミン・ミネラルを追加する消費者メリットとは何か、について説明しなければならない。また、ビタミン・ミネラルを制度の対象に加えて、健康被害が出た場合、どう責任を取るというのだろうか。

 はっきりと言えるのは、ビタミン・ミネラルの追加によって、消費者の健康や制度の信頼性と引き換えに、一部の企業が利益を上げるということだけ。端的に言えば、そのために業界側(一部の業界関係者ら)は政治に働きかけて、同検討会を開いてもらったわけである。

 国の健康・栄養政策との整合性が取れなくなる点も、反対する理由に挙げられている。国民の健康の維持・増進で、ビタミン・ミネラルは極めて重要な栄養成分。また、過剰に摂取すると健康被害が生じやすいという面がある。このため、食事摂取基準で「推定平均必要量」「推奨量」「耐容上限量」などを規定。食事摂取基準は、100人以上に上る第一線の研究者が慎重に定めたもの。これを基本に、全国の管理栄養士などがメニューを作成している。

 梅垣委員が指摘するとおり、ビタミン・ミネラルは、個々の企業判断で新たな機能性を打ち出して、国民に必要以上の摂取を促すことになる機能性表示食品制度に馴染まない。届出情報を見る限り、一握りの偏った知見を用いて、機能性を訴求しているケースも少なくない。そうした状況でビタミン・ミネラルを追加した場合、広告宣伝によって、科学的根拠が乏しい新たな機能性が消費者間で一人歩きするだろう。その結果、食事摂取基準に基づく健康・栄養政策は形骸化する。

 ビタミン・ミネラルを対象とする栄養機能食品制度は、十分な科学的知見を根拠とする機能性表示と、食事摂取基準に基づく摂取量で構成されている。これらの点で、機能性表示食品制度と大きく異なる。本来、ビタミン・ミネラルの問題は機能性表示食品制度ではなく、栄養機能食品制度の枠組みで議論することが適切と言える。

 これまでの検討会の状況を考えると、委員間の合意は不可能な状況にある。万一、報告書の取りまとめ段階などで、ビタミン・ミネラルを追加するようなことがあれば、それは業界による政治圧力が原因と考えられる。その場合、国民に健康被害のリスクを強いることになる。健康被害が出た際に、現政権と業界は“A級戦犯”として責任を問われることになる。

 それに加えて、同検討会を開いた意義も消えてしまう。アカデミア委員や消費者代表委員は完全に“コケ”にされたことになり、強く反発するのは必至。同検討会が紛糾するだけでなく、諮問・答申を行う消費者委員会の議論も荒れるだろう。消費者目線で行政を司る消費者庁にとっても、取り返しのつかない汚点を残すことになる。

 

<誰の目から見ても「糖質・糖類」のみが対象に>

 これまでの会合で明確になった2点目は、糖質・糖類の一部を制度の対象に加える方向にあること。関連業界にとって大きな収穫となる。

 糖質については、健康食品産業協議会が具体的な提言を行った結果、追加される方向で議論が進んでいる。糖アルコールなど一部の糖質はエネルギーがほとんどなく、国の健康・栄養政策と整合性を取りやすい点がポイントとなった。吉田宗弘委員(関西大学教授)が、「栄養学では、オリゴ糖や糖アルコールなどのエネルギーになりにくいものは糖質でないと教えられてきた」と述べるように、アカデミア委員も大筋受け入れたようだ。

 今後は、制度の対象とする糖質・糖類の範囲、対象とするための要件などについて、どのようなかたちで報告書に盛り込むのかが注目される。

 一方、タンパク質や脂質などについては、業界側から提案が出ていない。このため、具体的な議論さえ行われていないのが現状。業界自らが放棄したわけだ。

 食事摂取基準で基準が設定されている栄養成分について、健康食品産業協議会や日本通信販売協会などの業界代表委員が、まともに提案できたのは糖質・糖類だけ。検討作業はまだ続くが、同検討会が民主的・公正に運営される限り、制度の対象として報告書に盛り込まれそうなのは、誰の目から見ても糖質・糖類だけである。

(つづく)

【木村 祐作】

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