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2016年03月22日

機能性表示食品の研究論文、「査読なし」の疑い(後)

<学会理事長「査読ではない」>

 福生吉裕氏は(一財)博慈会老人病研究所所長を務め、日本未病システム学会理事長という重責を担う立場にある。福生氏に、(株)セラバリューズが消費者庁に届け出た論文が、査読付きかどうかを聞いた。

 福生氏は、「『原著論文』については査読が付くが、『研究論文』はプロシーディングなので、座長のコメントを通ったというレベルである。今の基準で言うと、査読ではない。学会で発表して、座長が『よろしい』と評価した発表論文にすぎない」と明言する。

 同学会の学術総会で発表された「研究論文」は、切磋琢磨するという意味で雑誌に掲載されるという。つまり、研究者にエールを送るという意味合いが強いわけだ。

 福生氏は、「(機能性表示食品として届け出る場合、)本来ならば、もう1回、原著論文で査読を求めるのがよろしいと思う」と話している。

 学術総会で(株)セラバリューズの論文にコメントを出した座長の宮田健氏(当時は崇城大学薬学部未病薬学研究室、既に退官)にも取材を試みようとした。だが、同研究室によると、「入院中で取材を受けられる状況にない」という。

 そこで、当該論文が発表された学術総会で、別の研究発表の座長を務めた学識経験者のA氏に話を聞いた。A氏は、「発表を聞いて座長コメントを書くが、そっちの方の論文(研究論文)は査読付きではない」との見解を示す。

 A氏の「研究論文」も、(株)セラバリューズの論文が掲載された日本未病システム学会雑誌(Vol.16 №2 2010)に掲載された。だが、A氏は「私は査読付きではないと整理している」と話す。さらに、A氏も表彰された経験があるが、「その論文も査読付きに入れていない」という。「当時は私自身の論文についても査読付きかどうかがはっきりわからなかったが、今は査読付きでないとわかる」としている。

 

<届出企業「査読の過程を経た」と主張>

 では、(株)セラバリューズの主張はどうか。同社の見解を紹介する前に、当該論文の執筆者の1人である櫻林郁之介氏(さいたま記念病院名誉院長)の説明を聞くことにする。

 取材で櫻林氏は、「問い合わせがあり、調べてみたら、本来の査読ではないが、学会から(雑誌の)掲載を依頼し、賞も受賞している。ゆえに、『准査読』と理解している」との見解を示した。ただし、査読付きかどうかについては、「ぼくらもわかりません」と述べるにとどまった。

 記者は今月18日、(株)セラバリューズの本社を訪ね、取材の経緯を説明した上で、同社の見解を確認した。同社は次のように主張している。

 「当時より日本未病システム学会では査読の仕組みを持っていましたが、この論文は第17回日本未病システム学会学術総会で学会発表され、複数の審査委員により審査され、研究奨励賞を受賞した研究です。また、座長からも『企画、実施方法、成績とその解析についてかなり質の良い研究であると評価している』という評価コメントもあり、このような場合は、掲載内容について問題がないことを予め確認したということで、発表者に学会の方から学会誌に掲載を依頼して、掲載するという特別な取り扱いをした論文となります。さらに、座長の当該研究論文に対する評価コメントが、同じジャーナルに掲載されています。これらのプロセスと雑誌掲載に至る経緯から、査読の過程を経た論文と考えています」。

 

<「『准』も認められない」の見解も>

 日本未病システム学会の顧問を務める長村洋一氏(日本食品安全協会理事長)にも話を聞いた。長村氏は福生理事長と同じ考え方であるという。「発表論文が素晴らしいと評価されたからと言って、査読があったという言い方はできない」と指摘。学会誌の品位を保つためにも「『准査読』も認めない」との立場を示す。

 一方、消費者庁では「個別案件についてはコメントできない」(食品表示企画課)としている。しかし、ジャーナルの質や査読の問題に対する関心は高く、今後の検討課題に浮上する可能性もある。

 取材を通して、届出企業と学会関係者の間で、査読に対する見解で乖離が見られた。査読をめぐる疑義は白黒を明確に付けることが困難で、今回もグレーな部分を残した。

 査読付きの根拠が明確でない場合には、届出企業は届け出る前に、学会や編集責任者などに十分に確認することが必要と言える。機能性表示食品制度に対する消費者の信頼を高めるために、疑義を生じさせない取り組みが求められている。

(了)

【木村 祐作】

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