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2016年04月07日

機能性表示食品の届出は今のままでいいのか?(1)

 機能性表示食品制度が昨年4月に施行されてから1年が過ぎた。その間、多くの疑義に対して撤回や届出履歴の変更、再届出が行われている。行き過ぎた研究レビューに対しては、事業者同士で警告やけん制も始まっている。機能性関与成分と商品の「同等性」の問題については、原著論文を持つメーカーから不利益を主張する声も。そうした問題の克服へ向けて討議した。

【司会:(株)データ・マックス 田代 宏】

 

【出席者】

国立医薬品食品衛生研究所 食品部 部長 博士(薬学) 穐山 浩(あきやま・ひろし)氏

 1993年千葉大学大学院博士課程修了。同年、国立衛生試験所(現・国立医薬品食品衛生研究所)食品部に入所。99年~2000年 、マックマスター大学(カナダ・ハミルトン)の医学部に留学、01年食品部第三室長、07年代謝生化学部第2室長、11年食品添加物部長に就任。15年から現職。分析化学と食品衛生化学、免疫化学を専門とし、健康食品関係ではアガリクス・アマメシバ・スギヒラダケなどの安全性に関する研究に従事。

 

(株)オムニカ 代表取締役社長 高尾 久貴(たかお・ひさたか)氏

 02年(株)オムニカ創業。06年9月、板橋工場取得。同年11月、オムニカ・コリア(医療機器製造業)を買収取得。09年12月、研究所設立。機能性原料のサプライヤー。機能性食品の研究開発、加工食品の受託製造、加工食品の販売などを幅広く手がける。

 

インデナジャパン(株) 取締役営業部長 川田 晋(かわだ・すすむ)氏

 イタリアに本社を置く医薬品・健康食品・化粧品の原料メーカー・インデナ社の日本法人。約100年の歴史を持ち、植物由来の各種原料の製造・開発・販売を行っている。同氏は、フランスの製薬メーカーでインデナ社が製造する医薬品原料(API)の輸入販売を担当。ビルベリー、ノコギリヤシ、イチョウ葉のエキスなど、健康食品の原料販売に力を入れた。2000年に日本法人インデナジャパン設立後、同社社員として活動している。

 

国立医薬品食品衛生研究所 食品部部長 博士(薬学) 穐山浩氏

国立医薬品食品衛生研究所 食品部部長 博士(薬学) 穐山浩氏

<安全と品質の信頼性が不十分>

 司会 機能性表示食品制度の問題点は何か。

 穐山 私は安全性と品質の部分に注目していきたいと考えている。ガイドラインによれば、安全性の部分で問題が起きたときに行政に伝わる仕組みになっているところを評価している。安全性重視の観点から回収、公開という流れになった方が健康被害を広げないためにもいいことだと思っている。

 現在、特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品制度があるが、新制度でも機能性成分について表示が可能となった点は評価している。ただ、分析法が公開されていないために信頼性が十分ではないとも感じている。公開されていないばかりに、第三者が事故歴を追跡できない仕組みになっている点が残念だ。

 また、機能性関与成分の解釈で間違っている部分があるので違和感を覚える。議事録を見る限り、議論はこれからだと思っているが、すでに受理されている製品もある。例示(ガイドライン47P「機能性関与成分の考え方」)に示されていない関与成分が受理されているが、これらはこれから議論すべきではないか。

 高尾 14年7月30日に終了した8回にわたる「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」の議事録を改めて見直してみて、とても良い議論が行われてきたと思っている。しかし、4月1日に施行された制度運用の実態は検討会の中身と乖離があるのではないか。

(株)オムニカ 代表取締役社長 高尾久貴氏

(株)オムニカ 代表取締役社長 高尾久貴氏

 我々は、検討会で発言された専門家の先生方の一言一句は重要な意味が含まれていると注目してきた。例えば、清水俊雄委員(名古屋文理大学)の発言にある相互作用についても、合田幸広委員(国立医薬品食品衛生研究所)が発言した品質に関わる機能性関与成分の定義についても、ガイドラインですべてを説明するという難しさがあるにしても、事業者の間でご都合主義な解釈が始まったことについて、とても残念に感じている。

 検討会後、消費者庁が定めた新たなルールに基づき論文指導の方針やプロトコルを変更して、機能性表示食品制度に相応しい論文を目指して、健常者に対する考察を行い、健常者におけるアウトカムを行うように努めてきたと自負している。 

 一方、同じガイドライン、同じ制度のなかで行われているいろいろな事業者がいるが、私たちの視点が間違っていたのか、それとも例外があって我々とは違う考え方になるのか、ガイドラインに忠実に努めようとしている人々とは明らかに違った活動をしている事業者が産業界のなかにいることに当惑を超えた憤りも覚えている。その理由を考えた場合、産業界に少し寄り添ったかたちで制度運用がされているのかなと感じている。その上で、私たちが検討会で見た制度と運用の実際とに差があるのではないかと感じている。

 川田 「いわゆる健康食品」はこれまで、機能性が標榜できないために、エビデンスを取得していてもそれを有効に活用することができなかったが、機能性表示食品制度ではそれができるようになった。私たちが扱っている原材料は、医薬品に基づくエビデンスが多くあるため、新制度は大きなチャンスと捉え、マーケットの拡大に期待している。いろいろな事業者が差別化を図るなかで、私たちはエビデンスを基に研究レビューを作成して販社に提案活動を行ってきた。

インデナジャパン(株) 取締役営業部長 川田晋氏

インデナジャパン(株) 取締役営業部長 川田晋氏

 その一方、コモディティ化というか、一般化する動きもあって、同等性やブランドを無視したようなかたちで研究レビューに弊社の論文が使われる事態も生じたりしている。これから業界がどう動いていくのか気になるところだ。

 司会 コモディティ化のなかで貴社の論文が使われ、貴社が不利益を被っているということか。

 川田 私たちは学術的な観点から研究論文を発表しており、弊社のユーザーへのエビデンスとして活用してきたので、新制度を意識して論文を作成していなかった。今回の制度では、研究レビューの作成に使用の許可なく弊社の論文の引用が可能とされているため、それを引用することで論文に使われた関与成分そのものを使用しなくても安全性や機能性を担保できてしまい、すでに弊社の原料を使用している販社にとっても大きな不利益となってしまう。その点、今後は知的財産をブランドで配慮し、差別化した論文を作らなければならない。これからの宿題だと考えている。 

3人(第1回) 研究レビューの運用について「分析法がわからない」という穐山先生のご指摘もあるように、研究論文と販売会社が届け出る製品の同等性について、ほとんどないがしろにされている気がする。我々としては、ガイドラインどおりの運用を行っていただきたいと思う。

 新制度の画期的なところは、事業者の責任で製造・販売し、消費者の責任で購買できる点だが、実際には事業者の責任が十分果たされておらず、消費者の選択に足る情報が十分に提供されていないといった印象を持っている。

(つづく)

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