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2015年11月12日

機能性表示食品って何?~原料3社が「疑義」に迫る(1)

 緒に付いたばかりの機能性表示食品制度だが、市販に漕ぎ着けた先行企業のなかには市場で大きく売上を伸ばしているところもある。半面、消費者団体などによる疑義の提出が相次ぎ、舞台裏ではさまざまな駆け引きが行われている。「疑義とは何か」「なぜ起きるのか」「原因は何か」など、疑義をめぐる問題点について原料3社の社長を招き、座談会を組んだ。原点に立ち返るという反省の意味を込め、改めて「機能性表示食品とは何か」を検証する。

<出席者>
甲陽ケミカル(株)    代表取締役社長 赫 太郎(てらし たろう)氏
ケミン・ジャパン(株) 代表取締役 橋本 正史(はしもと まさふみ)氏
(株)オムニカ  代表取締役社長 高尾 久貴(たかお ひさたか)氏
司 会:(株)データ・マックス ヘルスケア事業部部長 田代 宏

<最終判断のボールは消費者にある>
 司会
 機能性表示食品制度のスタート直後、複数の疑義情報が提出された。原材料メーカーが新制度で担う役割について、疑義を元に課題と展望を考察したい。査読の有無が取り沙汰されたキューサイ(株)(福岡市中央区)の『ヒアルロン酸コラーゲン』(『ひざサポートコラーゲン』に改称)について考えをお聞きしたい。

takao.jpg 高尾 『ヒアルロン酸コラーゲン』については、どのような人が共著者になっているのかを一通り目を通して見直してみた。専門領域の人間が一定の評価をし、雑誌に掲載するかどうか、そのような判断があったように見受けられる。手続き上の出版物がどうかというのは外から見てもわからないが、専門領域の人が目を通したということについては事実らしい。一定の水準の論文が掲載されているという点は事実で、研究の質についてはわからないが、消費者目線で言えば、手続上、一定の査読はあったものと受け止めている。

  グルコサミン研究会(長岡功会長・順天堂大学教授)については、8月28日付でファンクショナルフード学会と名称変更した。研究の幅を広げようという先生方の意見のもとに名称を変え、これを機会に査読についても明文化された。

 ただし、当時も査読的なことはやっていたと思うが、グルコサミン研究会のなかに規律としては存在しなかったようなので、それを企業側としてどう判断するかということになったのだと思う。というのは、今回の制度では「査読論文が一報でもあること」とガイドラインにあるが、査読の精度的なことについての規定はまったくない。新制度で届出企業の自己責任が求められている限り、企業側としてはこれで十分だと判断した上で届け出たものだと思う。

terasi.jpg 司会 査読の「精度的なこと」とは、査読のランクを指してのことか。

  そのとおり。消費者庁に文句を言うわけではないが、我々としては一定の指針を出してくれた方がやりやすい。

 橋本 査読があるかないかという点については、消費者庁が2012年に委託事業として実施した「機能性評価モデル事業」で、査読はあった方がよいという意見が出されたが、それが新制度で生かされたという印象を持っている。新制度で、あえて査読とはこういうものだと厳密な定義を示さなかった点については、理由があるのかなという気がする。あまり厳しくしすぎると、制度自体のハードルが高くなりすぎて、経済性の部分で行き詰まってしまう。査読付きの論文がどれくらいあるのかわからないなかで施行したため、何となくあいまいなかたちでスタートしてしまったのではないか。

 一方、査読付きとなると、学識経験者が見る観点と、消費者団体などが見る観点で違いが出ると思う。例えば、インパクトファクターでどれくらいの引用数があって、どれくらいの点数で合格という見方もあれば、対象となるのは食品だから、ある一定のレフェリーがあればよいというように、見る人によってかなりの幅が出てしまう。そのようななかで、あいまいなスタートにならざるを得なかったという固有の事情があったのではないか。

 とはいえ、結果的に査読の有無が理由で、受理の撤回などが実際に起きて、査読付きの問題を論じる必要性が出たときに、企業側として異議に対して反論できるかどうか、自己判断を迫られる結果になる。それが顕著に現れた事例が出ている。今後も同様のケースが考えられる。

 グルコサミン研究会(現・ファンクショナルフード学会)などが格上げしようとか、研究自体も精度を上げようとか、業界の活性化につながるのであれば、個人的には結果オーライだと感じている。査読について言えば、査読期間が短いなどの問題が指摘された企業もある。それも含めて、査読の有無については企業が判断し、最終的には受益者である消費者が判断することだと思う。

hasimoto.jpg 司会 ボールは消費者側にあるというのは同感。そういう意味で、外部からさまざまな批判の声が上がってきたというのは、かえって機能性表示食品制度がうまく機能していると言えるのではないか。

 橋本 海外の事例でいうと、ダイエタリーサプリメント制度のなかでも厳しくやっている企業と、そうでない企業が存在する。「これだけやればいい」という考え方があれば、「ここまでやらなければだめ」という考え方があり、企業によって大きなバラツキがある。日本の場合でも、時間が経てば良い方向へ収斂していくのかなと思う。

 高尾 今回の問題で「疑義」が出されていることがよいかどうかという問題については、疑義も新制度を機能させるためのカンフル剤という一定以上の役割を担っていると思う。では、受理されたことで商品が優れているかどうかは別問題で、機能性を担保しようとする論文を通じて、その商品の奥行みたいなものが見えてくる。受理とはどのようなものか、という点に踏み込んだ場合、必ずしも、消費者が商品を購入してから摂取し、その価値を認めることを保証しているわけではない。

 同じ名称の関与成分が入っていて、しかも摂取量が異なるもの同士の差が隠蔽されたり、規格の面で細かい違いがある成分(原材料)の供給元が違うことがウヤムヤにされたりなど、問題点は多い。にもかかわらず、いったん受理されると、今までの「いわゆる健康食品」ではできなかった機能性をまるで国からお墨付きを得たかのように標榜し、消費者もまたそれを受け取ることができるようになる。そのような情報に基いた商品を消費者が購入してから正確にその情報を理解するには、相当の時間を要するだろう。

 一方、米国では商品に関わる情報を消費者も比較的容易に見ることができるし、立場の異なる専門家同士の議論に、複数の人が触れる機会も多い。お互いの研究の質や研究の限界について、例えばルテインやメソゼアキサンチンなど研究企業同士が公開討論を行い、すべての人がそれを観察しているというケースもある。そのような機会を得られていない日本で、じっと受理を待つ身としては、研究の本質が適切に評価されないのではないかなど、多少の心配はある。

 司会 消費者が取得している情報と企業サイドで実際に行われている研究が異なっていても、それが表面化しないままで届出が受理され、市販された商品が消費者の手に渡る可能性もあるということか。

 高尾 その懸念は多少ある。それが良いことか悪いことかは別にして、そのような問題もあると考えている。

(つづく)

【文:田代 宏】

 

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