<消費者庁はチェック基準を明確に>
司会 さらに具体的に言うと?
高尾 消費者庁は1つの時期にあまりにも多くのものをチェックしなければならない。前例のある受理と同じ届出内容だと不備になるケースもある。受理後でも、「不備や指摘事項に関し意見交換を継続的に行う」として、まずはスピードアップをし、本当の意味で企業責任に帰するべきではないか。
橋本 受理して60日の猶予があるなかで議論しろというのが本来のあり方だと思う。そこでおかしいということになれば、企業責任で取り下げることはあってもいい。
高尾 そのとおりで、消費者庁が「受理」を基点にスタッフを増やして作業するのではなく、形式的なチェックと言っているくらいならば、そういうかたちで進めていただく方が高いレベルで制度運用ができるのではないか。消費者団体も受理の段階でキャッチしようとするから、そこをかいくぐった後はもう手に負えなくなってしまっている。その段階で何が良くて何が悪かったのか、あいまいなまま議論が進み、その後は問題そのものが消失してしまっている。これも受理を特別視し過ぎたための弊害だろう。
たとえば、届出情報に「疑義マーク」を付けるとかして、それに回答しなければずっとそれが付いて回るというような、そういうことでもいいのではないか。
赫 (笑)そういう意味では2年後の見直しを待たずに少し制度を見直した方がいいかもしれない。でなければ、結果的に消費者に対して疑問を抱かせる制度になってしまう。
高尾 臨床試験で届出をする場合だと、届出論文そのものが、本当に適切かどうかということまで心配しなければならないものもあるらしい。一報だけで実現してしまう届出であれば、同一研究中で、ランダム化試験ではない副次的評価項目のアウトカムの解析結果を、補足表示ではなく、表示される機能性に読み取りさせるような意図の届出資料は、曲解なのかもしれない。
レビューで届出をする場合だと、著作権を理由に個別論文が見られないことをよいことに、採択論文には書かれてもいない、「~を整える」みたいなアウトカムを祀り上げてレビューしたり、摂取量を低くする論文や、表示ネタとしてユニークなアウトカムを提供するための論文などを合体させたものもある。 正しくレビューすると否定されているアウトカムも生き返ってしまうし、足してバラして全体として提示するという、非常にわかりにくいものになっている。
ただし、研究レビューについて言えば、評価論文が多ければ良いというものでもない。対象者も違うし、何百もあるレビューのなかから、適切に採択し、適切に除外して残った1報と、元々3報しかなかったものを一緒にはできない。
そもそもシステマティック・レビュー(SR)と聞いたときに業界は震え上がったものなのだが、いつの間にか(公財)日本健康・栄養食品協会の機能性評価モデル事業に成り下がってしまった感じがする。新制度はもっとハイレベルの制度だったはず。
赫 最後の最後でSRが研究レビューという名称になって曖昧になってしまった感じがする。
高尾 SRということであれば、介入の条件のところで同等性に対して厳しい制限がかかっていくはずなので、抄録や研究の背景から始まるはずだが、いまの研究レビューのレベルだと、ある意味、いろいろなものが「有り」と言われても仕方ないのかもしれない。
赫 結局、消費者庁が判断基準的なところを精査していないということになる。海外の論文であれば日本語に訳したところだけを見て、日本語の論文でも要約したところだけを見ている。そこには企業側の恣意が入っているところなので、そこだけを見て判断されると今日のような問題が起きてしまう。
(つづく)
【文:田代 宏】